(PanAsiaNews:大塚智彦)
インドネシア最東端に位置するパプア地方で、ジョコ・ウィドド政権と現地パプア人の間の緊張が12月1日に向け、またも高まっている。インドネシアからの分離独立を求めて細々とではあるが現在も武装闘争を続けているパプア地方のゲリラ組織「自由パプア運動(OPM)」やその分派などが独自の「独立記念日」としているのが12月1日で、現地の警察や軍などの治安当局はこの日に向けてOPMや独立を求める住民らの運動が再燃することを警戒している。警察と軍という治安当局の両トップもすでに現地入りしており、12月1日は厳戒体制の下で迎えられることになりそうだ。
パプア独立の象徴「明けの明星旗」
パプア地方は、独立を宣言した1961年の12月1日(その後インドネシアに併合)を記念して、独立を願うパプア民族の象徴「明けの明星(モーニングスター)旗」を掲げて集会やデモを行うのがこの季節の恒例となっている。首都ジャカルタなどパプア地方以外でも、例年小規模ながらパプア人のデモや集会が行われ、警察部隊と小競り合いとなることもある。
だが「明けの明星旗」は公には掲揚も所持も禁止された旗で、12月1日には各地で同旗を巡る治安部隊との騒動が懸念されているのだ。
パプア地方はパプア州と西パプア州からなり、このうち西パプア州警察は11月25日に同州住民に対して「12月1日にはなるべく平静を保ちOPMなどの扇動に同調しないように」と呼びかけている。同時に同州での治安は「維持されている」として今後治安部隊を増員する予定がないとの立場を示した。
これに対し、現地・西パプア州の人権団体などは「12月1日はパプア民族にとっては歴史的に特別な日であり、政府や治安当局は否定的にとらえないように求める」との要請を公にして冷静な対応を呼びかけている。
混乱はすでに始まっている。西パプア州の州都マノクワリでは、11月27日にパプア人住民8人が地元警察によって逮捕された。警察によると逮捕と同時に「明けの明星旗」29枚を押収。8人はパプア独立に関連する住民集会への参加を呼びかけるパンフレットを所持していたという。
マノクワリ警察では「パプアの独立に関する集会やデモは基本的に違法である」として取り締まりを正当化している。それでもパプア地方の各都市では、12月1日に向けてパプア人による何らかの行動が計画されているものとみられ、治安当局は各地で情報収取と警戒を強化している。