8月26日、首都移転について発表するジョコ・ウィドド大統領(写真:新華社/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚智彦)

 インドネシアで30年以上にわたって独裁体制を敷いてきたスハルトが大統領を退任したのが1998年。それ以降、徐々に進展してきたインドネシアの民主主義が、ここにきて後退しかねない事態が相次いでいる。

刑法改正案に国民が猛反発

 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は9月20日、記者会見を開き、国会での可決が目前となっていた刑法改正案について、審議・採決を当面見合わせるよう求める異例の要請を議会に対して行ったことを明らかにした。

 というのもこの刑法改正案には、報道の自由を抑制する内容が含まれており、国民の間で猛烈な反発が広がっているのだ。最近は刑法改正に反対する民衆によるデモ隊が、連日、国会前に押し寄せる事態になっている。

 しかも、4月に実施された大統領選・総選挙で選出された新議員による国会が10月1日に招集される。そのような状況もあり、「(現国会の)任期満了直前に反対論が強い法案を拙速に採決する必要性はない」という政治的判断が、ジョコ大統領側に働いたのだと見られている。

 刑法改正案の中で国民が問題視している点は主に、①正副大統領、政府、裁判所、公的機関などへの侮辱、虚偽報道、不確実な情報の流布、死者の名誉棄損、宗教への侮辱といった「報道や言論の自由」に対する罰則強化、②配偶者以外との性的関係の禁止、未婚カップルの同居、人工妊娠中絶手術の禁止など「基本的人権」に関する規制強化、③企業犯罪取り締まりの強化、だ。