議会の各政党の反応はどうか。21日までに与党のイスラム政党「開発統一党(PPP)」と「ナスデム党」が大統領の延期要請に賛成する意向を示した。しかし野党の「福祉正義党」は「まだ議論の時間はある。その間に議論を尽くして予定通りの採択をするべきだ」として大統領の要請を拒否する姿勢を示している。

 国会のファフリ・ハムザ副議長(福祉正義党)も21日、「大統領は過去40年間、刑法改正を検討してきた人々の声にも耳を傾けるべきであり、採決は予定通りに行われるべきだ」との立場を明らかにしている。

 大統領からの異例の要請、それに対する各党の異なるスタンス、そして国民の中の反対論の高まり――。24日の採決予定日を直前にして国会が紛糾するのは必至の状況だ。今国会での改正案がどう扱われるのか、予断を許さない状況となっている。

汚職捜査機関の弱体化法案も可決

 インドネシアの民主主義を後退させかねない動きは他にもある。

 インドネシア国会は9月17日に大統領直轄の独立機関である「汚職撲滅委員会(KPK)」の実質的な権限弱体化を含む「KPK法改正案」を可決、成立させたのだ。

 1998年に崩壊したスハルト長期独裁政権の「負の遺産」とされる「汚職・腐敗・親族主義(KKN)」の根絶がインドネシア民主化の大きな指標とされ、2003年の発足以来KPKは現職の閣僚、国会議員、高級官僚、国立銀行頭取、政党党首、大使、司法関係者、地方議会議員などの汚職容疑者を数多く摘発してきた。

 KPKには独自の捜査権、逮捕権に加えて公訴権も与えられており、依然として汚職の風潮が完全に払拭できないインドネシアでは旧弊を引きずっているとされる警察や検察、裁判所などとは確実に一線を画したKPKは「最強の捜査機関」といわれ、汚職とは無縁の一般国民から絶大な信頼と支持を集めている。

 ところが同僚議員や国会議長らが次々と汚職容疑者になることに「危機感」を抱いたためか、KPKを独立機関ではなく、政府の一機関として監視委員会の下に置くことや情報収拾にための盗聴など通信傍受を行う場合の関係機関からの承認義務付け、さらに公訴に際して最高検との協議義務付けなど、その独立性を実質弱体化する法案が成立してしまった。