ジャカルタの大統領宮殿で、国防相に任命したプラボウォ・スビアント氏(左)と握手するジョコ・ウィドド大統領(写真:AP/アフロ)

(PanAsiaNews:大塚智彦)

 インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は10月23日に大統領2期目(2019年から2024年)を支える内閣の陣容を発表した。10月20日の大統領就任式でジョコ大統領は「2045年までに世界の5経済大国の仲間入りを目指す」として、経済大国への成長を目標に掲げた。

 その大きな目標への道筋をつける意味からも、まずは閣僚に若手企業人やベテランビジネスマンなどの経済専門家を起用し、経済中心の内閣をアピールしてみせた。

人権侵害疑惑の元軍幹部を国防相に

 一方で、政治的思惑が絡む人事も見受けられ、国民の不興を買っている。

 中でも議論を呼んでいるのが、最大野党「グリンドラ」の党首、プラボウォ・スビアント氏の国防相への大抜擢だ。プラボウォ氏は、4月の大統領選をジョコ大統領の対抗馬として戦い、僅差で敗北した後も、選挙管理委員会や選挙監視庁、憲法裁判所などに選挙結果への不満を訴えるなど、最後まで選挙結果に納得しなかった。彼の起用について、ジョコ大統領の支持者がいい感情を抱くはずがない。

 プラボウォ氏は軍人時代、32年間の長期独裁政権を維持し、1998年に民主化のうねりの中で崩壊したスハルト大統領の女婿となってとんとん拍子に出世し、エリート軍人として注目されていた人物だ。

 一方で1998年、民主化要求がスハルト政権打倒を叫ぶに至ると、プラボウォ氏は、学生運動家や民主化活動家に対する過酷な弾圧を指揮し、さらに1999年に独立の是非を問う住民投票が行われた東ティモールでも以前から独立派への暴力、殺害の指揮をとったとされており、「人権侵害の張本人」と目されている。

 それが故に当時のウィラント国軍司令官(ジョコ・ウィドド政権1期目で政治・法務・治安担当調整相を務める)から「軍籍剥奪」という不名誉な処分を受けて軍を去った経緯がある。

 そのうえ、国際社会、特にアメリカ政府からの人権侵害疑惑の解明要求を受け、インドネシア捜査機関がプラボウォ氏の調査したこともある。結局は「証拠不十分」で訴追されることはなかったが、人権団体は現在も彼への批判を続けているのだ。