材料と付け合わせ、昭和のハンバーグはこう進化した

「栄養と料理カード」でたどる昭和レシピ(11)ハンバーグ

2019.11.15(Fri)三保谷 智子

牛赤身肉に豚肉を1.5割混ぜ、肉ひき器でひく――昭和29年

『栄養と料理』1954(昭和29)年2月号の「栄養と料理カード」。出来上がりは絵で表現。カードの表にも裏にも右下に食品の広告が入っている。
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 まず、肉の準備のしかたに驚いた。赤身の牛肉を選んで、それに豚肉を15%混ぜて肉ひき器でひくとある。肉屋の店先で肉を選び、ひいてもらうのだろう。続けて、または包丁で細かくたたき刻むとある。500gもの肉を家庭にある包丁でたたき刻んでひき肉状にするのは至難の業だ。

 現在、日本の食肉売り場はとても親切だ。トンカツ用、一口カツ用、カレー用、焼き肉用、しょうが焼き用、しゃぶしゃぶ用、ひき肉など、料理の用途に応じてカットされたものが容易に手に入る。

「栄養と料理カード」は小さなカードだが、材料表と作り方のほかに、材料の応用や注意点、調理の要点、栄養価なども明記してあるので応用がきく。だが、食パンの代用として小麦粉、白ソース、豆腐を挙げており、これらでは味も食感もまったく違う出来上がりになると思う。

 ポイントは、タマネギは透明になるまで炒めること。そして、肉だねは楕円形に整えて片面の中央をくぼませ、その面を上にして強火で焼き始めること。火加減と焼き時間については、裏返してからも細やかな指示がある。これは、外が焦げて中が生焼けの状態になることや肉汁が流出することを防ぐためだ。

牛赤身肉の肉だねにバターを加える――昭和35年

1960(昭和35)年1月号の「栄養と料理カード」は、初めてカラーになった第1号目。材料の肉は牛赤身のひき肉100%。やわらかく練ったバターに肉を加えて肉だねを作るのは、口当たりと風味をよくするためか。
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 牛ひき肉は脂肪の少ない赤身をざっとひいたものがよいとの解説から、肉の嚙みごたえやうま味を生かした、ステーキに近いハンバーグを目指したものと想像した。さらに写真を見て、レストランで食べるような料理だと感じたのは、ジャガイモもタマネギも油で揚げており、付け合わせにも手をかけているから。タマネギのリングフライはうれしいが、ハンバーグの付け合わせとして家庭で作ることは、現代ではあまり考えられない。

 材料表にある「生パン粉」は、現在の市販されている生パン粉とは異なり、各自が作る。カード裏面の解説には、食パンの白い部分をふきんで包んでもみ、粗いふるいにかけるとあり、とてもていねいな作り方と感心する。昭和29年のハンバーグでは、食パンは耳を除いて水か牛乳に浸し、汁けを絞ってから肉だねに加えている。固くなったパンでも水分を加えればよいということのようだ。

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