2015年に世界のCO2排出量の内訳は、以下のとおりだった(欧州共同体の発表データ)。

 29.4% 中国
 14.3% アメリカ
 9.8% 欧州経済圏 
 6.8% インド
 4.9% ロシア
 3.5% 日本
 31.5% その他

 2013~30年の18年間に、地球の気温はどれほど上がるのか? 2014年のIPCC第5次評価報告書(第2章)に登場した世界の年平均気温推移(陸地+海面)と同じ勢いなら、0.27℃になる。

 人為的CO2の寄与はその一部である。IPCCの報告書によると、過去100年で地球の気温は1℃ほど上がったと言われるが、その半分(半分以上)は数百年前からつづいてきた自然変動や20世紀後半から進んだ都市化のせいであろう。人間活動から出るCO2の効果はせいぜい0.5℃と推定できる。0.2~0.3℃や0.1℃くらいとみる研究者もいる。

 ここでは多めにみて0.27℃のほぼ半分、0.15℃になるとしよう。それなら、CO2を世界の3.5%しか出さない日本が21.9%だけ減らしたとき、地球を冷やす効果は「0.15℃×0.035×0.219」つまり0.001℃にすぎない。超高級な温度計でも測れない変化にあたる。

 その18年間、従来のまま温暖化対策費を使いつづけるとすれば、総額はほぼ50兆円になる。また、やはり温暖化対策のためと称して2012年に民主党政権が導入した「再エネ発電賦課金」が40~50兆円ほど使われ、それを合わせると約100兆円に迫る。

 使った巨費がエネルギー消費(CO2排出)を促すため、「0.001℃の低下」も甘い。つまりパリ協定のもとで日本の約束は、100兆円も使って地球をほとんど冷やさない営みだ。

 100兆円をつぎ込んで最大0.001℃しか冷やせない──という明白な事実を政府が正直に発表し、それをメディアが報じてくれれば、集団ヒステリーめいた「温暖化対策」騒動も沈静化に向かうのではないか。

英独の策略と京都議定書の顛末

 温暖化論や温暖化対策の話は当初から国際政治の道具となり、巨費が飛び交い続けるせいで、「まっとうな科学」ではなくなっていた。