日本は過去8年間、官民合わせて20兆円以上を「CO2排出を減らすため」に費やしてきた。しかし、その20兆円でCO2排出量が減り、地球の気温が下がった気配はない。IPCCという「権威」の言うがままに日本は、東日本大震災の被害総額(17兆円)以上の巨費を無駄に投じてきたのだ。

 だが、ここにきて「人為的CO2脅威論」は科学的なほころびが次々と明らかになり、崩壊への道をたどりつつある。日本社会の健全な回復のためにも、私たちはそろそろ地球温暖化という神話(ホラー話)から目を覚ますべきだろう。

IPCCの報告書は「天の声」なのか

 2013年9月26日、国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が「第5次評価報告書」(以下「報告書」)を発表した。正確に言うと、報告書全体のうち、まず科学知見を扱う第1作業部会の「政策決定者向け要約=SPM」を承認・公表し、最終稿を受諾した(出版は2014年1月の予定)。

 第2作業部会(影響)のSPMと最終稿は2014年3月の総会(横浜)で、また第3作業部会(対策)のSPMと最終稿は同4月の総会(ベルリン)で承認予定。なおIPCCは従来、第1次(1990年)・2次(1995年)・3次(2001年)・4次(2007年)の報告書(各3分冊、約3000ページ)を出してきた。

 第1作業部会の報告書を日本のメディアは、天の声かのごとく聴き、社説で「温暖化対策」の緊急性を訴えた(後述)。IPCCに集い、「人類の未来を守りたい(?)」官僚や、潤沢な研究費と名声を楽しむ研究者には、思う壺だったろう。

 だが報告書には問題が多い。事実から目を背けた部分や、第1~4次より劣化した部分もある。

 個人的に重要だと思う点を、紙幅の範囲で紹介したい。扱いきれない側面の私見は、昨年の拙著『「地球温暖化」神話――終わりの始まり』(丸善出版)に述べてある。ご参照いただきたい。

国民をその気にさせるテクニックとは

 1970年代後半から人為的CO2温暖化を心配する人々が次々に現れ、88年のハンセン証言(注:NASA・ゴダード宇宙研究所のハンセン前所長が「CO2が地球温暖化を引き起こす」と証言し、地球の気温トレンドの上昇を予測。しかしその予測は完全に外れた)をきっかけに世は「CO2脅威論」一色となる。その際、CO2脅威論を世界中に植えつける大きな役割を果たしてきたのがIPCCだ。