だが「小さい」どころの話ではない。1998年以降(ほぼ京都会議以降)の16~17年間は、権威ある数機関が発表する地上気温も、1979年以来の衛星観測気温も、横ばいのまま推移している。なお、衛星観測した日本の大気温は、過去35年間まったく上がっていない。さらに、2001年以降の12~13年間は、どの気温データもくっきりと低下傾向を示す(2030年ごろまでは寒冷化が続くと予想する論文もある)。
同じ期間に世界のCO2排出量は、中国などの工業化で激増してきた。だから、IPCCが今回の新見解だとする「世界平均地上気温の上昇幅は、CO2の積算排出量にほぼ比例する」は、どこからどう見てもおかしい。
16~17年間に及ぶ「温暖化停止」という事実の意味は重い。なぜなら、少なくとも同期間、仮に世界各地で「異常気象」や干ばつ、早い梅雨入り、「最も遅い真夏日」があったとしても、その原因が「地球温暖化」だとは言えないからだ。その肝心なことをIPCCは、報告書のどこにも明記していない。
ちなみに過去17年間、室戸台風(1934年:上陸時911ヘクトパスカル)や枕崎台風(1945年:同916ヘクトパスカル)、伊勢湾台風(1959年:同929ヘクトパスカル)に肩を並べる強さの台風は日本に上陸しなかった。
17年間はそうとう長い。高校生には全人生(12~13年間でも就学以来の人生)だ。先ごろ某高校に招かれた際、約20名の生徒に「17年間の気温の横ばい」と「12年間の寒冷化」を語ったところ、小学校・中学・高校で「危険な温暖化が進行中」と先生(やメディア)に教わり続けてきた彼らは、一様に目を白黒させていた。
「海の温暖化」を持ち出す支離滅裂な解釈
さすがに16~17年間の温暖化ストップ(IPCC語で「平均気温上昇率の低下」)は気になるのだろう、IPCCは「海の温暖化」を持ち出した。
「1971~2010年の深度0~700メートルの水温上昇はほぼ確実」「1992~2005年に3000メートル以深の水温が上がった可能性が高い」と述べ、「1971~2010年に起きた海の温暖化は、気候システムが蓄えたエネルギー変化の90%以上を占める」としている。
だがそれもありえない。「CO2が生む」熱は深海に直行せず、表層を暖めてからじわじわ深部に拡散するからだ。
表層が暖まったときは、大気も必ず暖まる。つまり、「深海の温暖化」は、「地上気温の横ばい」の説明にはならない。支離滅裂・自暴自棄の世界だろう。
そもそも第1次~4次報告書は、海の温暖化に深く立ち入ってはいない。すると、「これで科学面は決着」と胸を張った第4次までの気候モデルが、ほぼ誤りだったと認めたことになる(むろんそう書いてはないが)。