・ガイア博士

 地球の環境を「地圈・水圏・気圏と生物界が働き合う生命体」とみなす「ガイア仮説」は、英国出身の化学者ジェームズ・ラブロック博士が1960年代に唱えた(ガイアはギリシャ神話に登場する地母神)。彼は、1980年代の末に始まった地球温暖化ホラー話をまず額面どおりに受け入れ、2006年1月(88歳)の時点でもこんなことをいっていた(『インディペンデント』紙への寄稿)。

 地球温暖化が進むと、2040年までに60億人以上が洪水や干ばつ、飢饉で命を落とすだろう。2100年までには世界人口の80%が死に、この気候変動は今後10万年ほどつづくに違いない。

 だが2010年ごろにラブロックは目覚めたらしく、2016年9月30日の『ガーディアン』紙に彼のこういう発言が載っている。

 地球の気候は複雑すぎます。5年先や10年先のことを予測しようとする人は馬鹿ですね。・・・私も少しは成長しました。・・・温暖化対策を含めた環境運動は、新興宗教としか思えません。なにせ非科学のきわみですから。

今世紀中期でも化石資源が世界を支える

 日本の政府も企業も庶民も、景気浮揚や収益・所得増を望み、メディアは温暖化問題を盛大に報じる。どれもエネルギー消費(の排出)を増やす話である。

 IT化やAI化も同類。10年近く前から増殖したスマホだけで中型火力1基分の電力を食い、国の排出を増やしてきた。そんななかCO2排減を唱える政治家や識者やメディア人は、二重人格者か偽善者なのだろう。

 今世紀の中期でも世界エネルギー消費の80%は化石資源が担う──と2016年に米国エネルギー情報局(EIA)が予測している。それを知りつつ「2050年までに、排出ゼロ」などと叫ぶ人々は、いくら自身が退職ないし他界後の話だとはいえ、無責任きわまりないと思う。

「地球温暖化」狂騒曲』(渡辺正著、丸善出版、2018)
「地球温暖化」の不都合な真実』(マーク・モラノ著、渡辺正訳、日本評論社、2019)