2014年、先発で投球するニューヨークメッツの松坂大輔(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 先日のプロ野球ドラフト会議で、千葉ロッテマリーンズが、令和の怪物・佐々木朗希選手の交渉権を得ました。

 名伯楽の吉井理人ピッチングコーチのもと、二木康太、種市篤暉といった20代の若手ピッチャーが台頭し、平沢大河、安田尚憲、藤原恭大といった近年の甲子園を沸かせた大型野手たちも主力になりつつある若いチームです。将来を考えても恵まれたチームに決まったと思います。

 もうひとりのドラフトの目玉だった奥川恭伸は、ヤクルトが交渉権を得ました。この世代が「佐々木世代」と呼ばれるのか、それとも「奥川世代」と呼ばれるのか。はたまた同じく一位指名だった堀田賢慎(ジャイアンツ)、西純矢(タイガース)、宮城大弥(バッファローズ)ら、他の名前が引用されるのか。

 数年後を想像しても、楽しみなドラフトでした。

 そうした新世代の活躍が期待される一方で、永川勝浩(カープ)や館山昌平(スワローズ)が引退し、「松坂世代」の現役選手が減り続けています。藤川球児(タイガース)の今シーズンの完全復活や、和田毅(ホークス)の日本シリーズでの好投など、活躍し続けている選手もいますが、なにせ名前が使われている松坂大輔自身が、来シーズンの所属先が決まっていません。

「松坂世代」は「ロスジェネ世代」

 約100人近くが在籍し大勢力を誇ったのも今は昔で、年齢にはあらがえず、これも時代の流れなのでしょうか。

 その「松坂世代」は、1980年生まれの学年で、いわゆる「ロスジェネ世代」の終わりのころに当たります。1990年代後半から2000年前半の就職氷河期に社会に巣立ったこの世代は、非正規雇用者が多く、低賃金に悩まされ、未婚率が高いまま年齢を重ねています。

 40歳、フリーライターで収入は不安定、未婚で彼女なし。『ロス男』(平岡陽明)の主人公の吉井もそんな「ロスジェネ世代」の一人。

 物語は唯一の肉親だった母親を亡くした喪失感に陥りながら、先行きに閉塞感を感じていた吉井が、ある日、元同僚で大先輩のカンちゃんと再会するところから始まります。それをきっかけとして末期の癌に侵されたカンちゃんの奥さんや、アスペルガーの女性作家、LGBTの男子高校生とも知り合い、心の中の何かが変わり始めます。