地球温暖化でかつての治水技術では対応できなくなりつつある

武田信玄の知恵

 最近日本を襲う自然災害は「過去に経験したことの無い豪雨や暴風」などと発表されることが多くなった。

 特に今年の夏や秋だけでも北九州集中豪雨による佐賀県大町町付近での河川の氾濫、台風15号による暴風による千葉県内の長期大停電、台風19号による長期集中豪雨で甲信越・関東・東北地方の広範囲で71河川128か所が決壊、死者・不明者合わせて約100人近くに達するなどの大災害に次々と襲われた。

 これらの自然災害により、多くの人命が失われ、家屋・鉄道・道路などのインフラも甚大な被害を受けた。

 古来日本は世界的に有名な自然災害大国であるから、その備えには知恵を出し、それぞれの立場の部署では防護策を講じてきた。

 しかし、近年の災害は地球温暖化の影響とも言われる異常気象で結果的に想定外の猛威が対策の間隙・弱点をついた自然の脅威になす術もなく後れを取った形になった。

 我々日本人はこの国土に住み続ける限り、国民が一致団結し、知恵と努力を重ね災害を食い止めることができなかった原因を究明し改善して今後も災害軽減に備え努力しなければならない。

 今年の災害は全国規模に広がったためいろいろな場面があるが、先人の知恵を借りて現代版で見直せば改善できる箇所もあると考えるので、独断と偏見を省みず、その一例について言及したい。

 戦国武将武田信玄公は武勇に優れた歴史上の人物であったが、ただ武勇のみならず治山治水にも見事な足跡を残して住民の安寧に寄与した知将で、真の名将である。

(図1)設置場所と形状

 ここで取り上げたいことは今回の災害にも関連する甲斐の国を源流として駿河の国に流れる富士川上流竜王町の釜無川と御勅使(みだい)川の合流地点に築かれ、水害の軽減に大きく寄与した(世に有名な)「信玄堤」である。

 この地点は毎年雨季になると大水に見舞われ、付近の住民は苦しめられた。

 そこで、信玄公は実に20年もの年月をかけてこの「信玄堤」を完成させた(図1)。

(戦国武将列伝Ω 信玄堤から引用)