「日本は日本人だけの物ではない!」と宣った人がいた。
それもあろうことか歴とした日本国の総理大臣が言ったのだから驚嘆したことは今でも私の耳に強烈に残っている。
「冗談じゃない!」
「この国は我々日本人の無数の祖先が有史以来命がけで綿々と守り続けてくださった麗しい国土日本だ!」
それも、先の大戦後戦勝国の占領下に置かれた以外、記録に残る限り他民族の支配を受けたことがないため、世界に類例がないほとんど純粋とも言える単一の日本民族で構成され、言語・文化を共有している人類史上の奇跡とも言える国家である。
この秋津島に我々大和民族はその中核として皇室を戴き2000数百年以上もの穏やかな国体を堅持してきた。
ここに秀麗な文化が花開き、民の多くが世界の常識を超える高い知性を持ち、礼儀正しく、勤勉な民族性を受け継いで概ね平穏に生きてきた。
そして、武士が戦闘をすることも屡々あったが、大陸国家で見られるような、戦勝した軍兵が非戦闘員を含む全住民を殺戮すると言ういわゆるジェノサイドなどはほとんど見られない。
多くの戦いでは敵の大将首(即ち敵対する意志のシンボル)を奪取すれば争う目的が達成されたとみなされ、占領地の住民は勝者繁栄の基盤を為す重要な宝物であり労働力として移管され大切に扱われた。
このような日本民族の伝統文化は江戸時代の鎖国政策でより一層華やかで精錬された中身に純化されたが、江戸時代末に至って相次ぐ列強の開国要求に晒され、その危機の中で江戸幕府が大政奉還という人類史上でも希有とも言える平穏な政権交代が断行された。
そして文明開化を余儀なくされた明治政府は間髪を入れず富国強兵策を打ち出し、西欧強国の脅威に対処することとした。