── この取り組みの精度や効果を高めていくための、今後の課題は何でしょうか。

HRプロ

髙本 自社だけでなくさまざまな業種・事業形態でどのような分析結果が出るのか、お客さまとも協創しながらこの取り組みを進めたいと考えてリリースし、実際の提供もスタートさせていただいています。もちろん、弊社内で成果・実績を上げていくことも大切で、現在、分析結果に対する各種具体的な対策を講じて、その効果を測定しているところです。データが増えれば増えるほど、よりクリアな施策を取れるようになるでしょう。

 ただ、たくさんデータがあればいいというわけでもありません。何を調べるのか、そのためにはどんな質問を設定すればいいのか、分析結果から誰に対して何をフィードバックし、何を期待するのか……。そうしたことを考え、実行するためには、現場を知っているHR部門の能力が高くないといけません。膨大なデータを読み解く力も必要です。

 しかし、そうした知識や能力を持つ人材の確保が難しい時代です。幹部社員と若い社員とではデジタルリテラシーがまるで異なるように、ITの進歩は目まぐるしく、これまで以上のスピードで各個人が成長していくことが求められています。

 だからこそ、“個”にフォーカスしたアプローチが必要なのです。刻一刻と変化するビジネス状況の中で、人事施策にも高いフレキシビリティが要求されるようになります。だからこそ、社員個人、マネージャー、人事が共通の認識を持てれば、それをもとに、個人に対してもチームに対してもより精度の高い対策を取れるようになるはずです。そのための共通言語、現状を可視化するツール、意味のあるデータを集めて活用するためのプラットフォームが、この『個を活かすPeople Analytics』だといえるでしょう。逆に、こうしたことに取り組んでいない企業は、今後、人の流出が止まらなくなるのではないかと考えています。

取材を終えて

 採用難、既存従業員の負担増とモチベーション低下、離職率上昇、生産効率の落ち込み、企業としての魅力・体力減衰、ますますの採用難……。そんな負のスパイラルは、社員をマス(集団)で捉えていては簡単には打開できない。考えてみれば「あの人には何が必要か」と分析し、個別に最適なアプローチやアドバイスを実践し、貴重な人材に大いに活躍してもらうのが人事の基本だ。日立製作所の「個を活かすPeople Analytics」は、AIを活用することにより、その“人事の基本=個人重視の施策”の効果を最大化しようとするものだといえる。この取り組みの根底にある「すべては個人のために」という思想が全企業に浸透し、すべての人が生き生きと働ける社会が訪れることを期待したいものである。

日立人財データ分析ソリューションの概要