分析結果をもとに、より精度の高い人事対策を打ち出す

──そうした分析結果が「個を活かす」ためのアドバイスや施策につながっていくわけですね。

大和田順子 氏大和田 分析結果は、各個人用のアドバイスシートとしてフィードバックし、何が自分の長所なのか、足りない部分が何なのかを認識し、成長につなげてもらうようにしています。また、マネージャーには部下のデータと自分の組織全体の分析結果が渡されますから、それらを日々のマネジメントに役立ててもらいます。「役割理解度が低いから仕事が浅くなる」など、生産性に対する考え方のフレームワーク、共通言語、考える軸として分析結果を使ってもらうことで、上司と部下間のコミュニケーションは円滑になり、具体的な改善策が見つけやすくなると思います。

髙本 大切なのはフィードバックです。部下の意識や状況を理解したうえで丁寧に接することで、コミュニケーションの質は上がり、各個人のモチベーションやパフォーマンスも上がっていくはずです。またメーカーである弊社には理系出身者が多いため、データや数字をもとにした説明が説得力を持つ、という側面もあります。意識、行動、経験など、言葉では定義し辛かったことを数字とデータで示し、「こういう数字の裏付けがある人は成功していますよ」と説明すると納得してもらいやすいのです。

大和田 若い人ほど「自分を理解してほしい」という気持ちが強いように思います。分析結果をもとに、一人ひとりに最適化したアドバイスをすることで、「会社はちゃんと私を見てくれている」という満足感が生まれ、モチベーションは高まり、定着率も高めることにつながっていくと考えています。

── 各個人に対してだけでなく、組織やチーム全体の生産性に対しても有効なアプローチを取れそうですね。

髙本 生産性の高いグループと低いグループの行動の違いを、AIの活用で見つけられるようになりました。例えば、ある組織では金曜に残業をしている人たちは、総じて生産性が低いという結果が出ました。理由は不明です。もしかすると、マネージャーの段取りが下手で週末に仕事のシワ寄せがきているとか、週末の金曜の日中に細切れの会議が入っているとかが想像されます。また、金曜に残業をせず生産性が高いという人も、よくよく調べると、「開発用マシンを占有できるのは土日だけ。せめて金曜は早く帰ろう」と考えて、残業を減らす代わりに休日出勤は増加、その結果として生産性を上げているだけなのかもしれません。理由は詳細調査が必要ですが、分析結果としてデータ上ではそう出ているのです。

 ただ、これまでのような「総労働時間を何%減らしましょう」「月の残業は何時間までに抑えましょう」といった抽象的な呼びかけではなく、分析結果をベースに具体的な対策を打てるようになったことは確かです。もし、毎週月曜の朝に大きな定例会議があって、そこに提出するデータの取りまとめや資料作りのため金曜は残業せざるを得ない、ということであれば「じゃあ月曜の朝の会議を止めよう」と具体的な提案ができるわけです。

大和田 あるお客さまからは「社員の教育やモチベーションの維持は順調だ」と信じていたのに、突然離職率が高まった、というご相談がありました。『配置配属サーベイ』の分析結果を人事部門が把握し、「順調といっているけれどスコアはこんなに悪いよ」などと現場とのコミュニケーションが取れるようになれば、バイネームでフォローするなど個人に寄り添った対策により離職を抑えられると考えています。