── より個人にスポットを当てたサーベイや分析の手法が必要であり、それを個々の社員に対するアドバイスや具体的な人事施策に生かす“個別最適化”が求められる、ということですね。実際にはどのようなことを調査・分析しているのでしょうか。

HRプロ

大和田 ホワイトカラーの生産性の意識を探る『生産性サーベイ』と、配置配属に対するフィット感を調査する『配置配属サーベイ』の2つがあります。

 筑波大学の学術指導のもと、生産性の高い社員の行動を分析したところ「挑戦意欲が高いか」「時間を上手に使えているか」「自分の体調管理を心がけているか」……といった要素が個人の生産性を決める重要な因子だと分かりました。そこで、挑戦意欲など“創造性”に関する2因子、時間の使い方など“効率性”に関わる3因子、そして“心身の調整”という1因子、計6つの因子を抽出したのです。また個人の集合体である組織としての生産性を測るため、“働き方許容性”や“目標明確性”など、組織に関する5つの因子も抽出しました。この11個の因子をもとにした33の設問によって、社員一人ひとりの生産性の意識を図るのが『生産性サーベイ』です。

 一方、『配置配属サーベイ』では、“組織貢献意識度”や“相互刺激感知度”など個人が持つ6因子と、どういう組織ならフィット感が高まるかを図る組織関連の5因子、やはり計11の因子を抽出し、調査しています。

 1因子あたり3問、合計33問の質問に回答してもらうことで、各個人が、高い生産性につながる意識を持てているか、配置配属にフィット感を持てているかなどを明らかにするのですが、さらに、勤怠や出張記録、パソコンの使用ログなど、人事・行動データを掛け合わせ、AIによって総合的に分析するのが、今回の取り組みの大きなポイントです。

髙本 個人の生産性意識や配置配属に対するフィット度と、実際の行動を掛け合わせることで、本当にいろいろなことが分かってきます。これを人力によって解析するにはかなり無理がありますね。AIなら、われわれ人間が気づかないところ、見落としてしまうような部分にまで気づいてくれます。正に「データはすべてを語る」ということを実感しています。

── 2つのサーベイと総合的な分析によって、具体的にはどのようなことが分かるのでしょうか。

髙本 6因子のスコアを六角形のレーダチャートで示した場合、職位が上がるに連れてスコアも均等に上がって同心円のように見える組織もあれば、特定の因子だけが上がるなど凸凹になる場合もあります。これは、すでに収益や仕事のルーティンが安定している「守り」の仕事なのか、新規事業などの「攻め」の仕事なのか、組織・チームの実情によっても異なるのですが、組織の状態が一目で読み取れますね。また、総じて言えるのは、ローテーションで複数の職場を経験している人の方が、スコアは高い傾向にあることも確認することができました。

大和田 あるお客さまでは、ハイパフォーマーは創造性と効率性のスコアが高い半面、心身調整度が低いという結果が出た組織がありました。これは、無理をして業績を上げている傾向になるということです。またその組織では、ハイパフォーマーほど組織に対する不満が大きいという傾向も見られました。優秀な人だから大きなプロジェクトを任され、結果を残し、上司も「彼は放っておいても大丈夫」と考えがちなのですが、実は「上司が見てくれていない」「きちんと話をする場がない」と嘆いていることが読み取れました。どれほど優秀な人でも、やはり適切なフィードバックを欲しているものなのです。