もう誰も気にしなくなったが、朴槿恵前政権が弾劾に追い込まれたのは、「崔順実ゲート」と呼ばれる朴槿恵前大統領の親友の疑惑を、中央日報傘下のテレビ局JTBCが告発したことが発端だった。その番組は私も観たが、なぜかテレビ局側は、崔順実氏のタブレット端末まで入手しているようで、その中身を詳細に報じていた。
いったいなぜ、一メディアにそんなことが可能だったのか? 私はだいぶ後になってから、ある関係者から、次のような話を聞いた。
「崔順実ゲートを仕掛けたのは、アメリカだった。実は朴槿恵大統領は水面下で、北朝鮮の金正恩委員長との電撃的な南北首脳会談を画策していた。そして、朴大統領の『密使』の役割を果たしていたのが、40年来の親友である崔順実氏だった。
アメリカは、このままでは米韓同盟が危機に陥ると見て、崔順実氏の数々の問題を、朝鮮日報に持ち込んだ。だが朝鮮日報は、怖気づいて報道しなかった。それで次に、中央日報に持って行った。中央日報も本紙では報道しづらいとして、子会社のテレビ局に回し、そこで報道された」
米国の工作に気づき慌てて金正男氏を暗殺
この話には続きがある。アメリカの動きを察知した北朝鮮が、調査を進めたところ、アメリカは金正恩委員長の異母兄の金正男氏に、亡命政権を作らせようと画策していることをキャッチした。それで慌てた北朝鮮は、2017年2月、マレーシアのクアラルンプール空港で、金正男氏を毒殺したというのだ。
この一連の話の虚実は不明である。だが、1979年の朴正煕大統領の暗殺事件の時から、韓国で政権に「重大な異変」が起こるたびに、「アメリカの関与」が取り沙汰されてきたのは事実だ。
それを考えると、まるで「内戦」のような韓国国内や、過去半世紀で最悪と言われる日韓関係も問題だが、東アジア安定の支柱の一つとも言える米韓関係の悪化もまた、大問題なのである。
GSOMIA破棄の翌月、12月24日には、北京で日中韓サミットが予定されている。中国はいま、日韓関係を修復し、あわよくば日韓両国を中国側に取り込もうと画策している。中国を「21世紀のソ連」と見なし始めたアメリカは、そんなことは許さないだろう。
というわけで、今後、文在寅政権の命脈が絶たれるとしたら、その引き金を引くのはアメリカかもしれない。文在寅大統領が曺国氏を法務長官に任命したことで、その確率がいくばくか上がったのは確かだろう。