韓国の文在寅大統領が法務部長官候補に指名したチョ・グク前青瓦台(大統領府)民情首席秘書官が9月2日、国会で記者懇談会を行った。(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

(崔 碩栄:ノンフィクション・ライター)

 韓国の法務部長官候補、曺國(チョ・グク)氏の任命問題の話題で韓国は持ちきりだ。不正疑惑が次から次へと明るみに出るてくる彼が果たして法務部長官候補として適任なのかと、1カ月ほど前から続く論争は収まる気配がない。マスコミや一般世論は「彼は適任ではない」と任命撤回、あるいは彼自身による辞退という「決断」が必要だという声が大勢を占めているが、与党と青瓦台はこれを無視して任命を強行する方向だ。

各社の「エース記者」不在の記者会見

 大きく取り上げられている疑惑は3つある。

1、彼を含む親戚が所有する学校財団の不正疑惑
2、青瓦台民情首席秘書官として在職中に起きた財産形成と投資疑惑
3、彼の娘が不正に名門大学、大学院に進学し、かつ、通常はありえない条件で奨学金を受けていたという疑惑である。

 9月2日、緊急記者会見を開き、疑惑に対し弁明したのだが、「知らない」という言葉100回以上も繰り返すなど、記者会見の中でも明解な説明のなされない状況に、マスコミにも国民たちにも疲労感だけが残った。

 実のところ、そもそもこの記者会見自体が変則的なものだった。韓国マスコミはこの記者会見を「緊急」「奇襲」「電撃」と表現したが、記者たちが記者会見開催の通知を受けたのは、会見開始のわずか3時間前だったのだ。その上、彼の不正疑惑については検察、法務部担当記者たちがメインとなり取材してきたのだが、この記者会見の参加対象になったのは、マスコミ1社あたり1名、しかも与党の記者クラブ、あるいは国会の記者クラブに属する記者たちだった。彼の一連の疑惑について最も詳しく、鋭い質問をぶつけられるような各社の「エース」は参加することができなかったのだ。この点についてマスコミからの不満の声が漏れたのは当然のことだった。