クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)が、今月末、日本で公開となる。
すでに米国でタランティーノ作品最高のオープニング成績を収めるヒットとなっている最新作の舞台は1969年のハリウッド。
レオナルド・ディカプリオ演じる架空の主人公と、ロマン・ポランスキー、シャロン・テート、スティーヴ・マックィーン、ブルース・リーといった実在の大物映画人との「昔々、ハリウッド」での虚実織り交ぜた物語である。
その背景などについては日本公開後ご紹介することにして、しばらく、この作品同様、映画自身が描いた「昔々、ハリウッド」での物語を、眺めていきたいと思う。
まずは、レンタルビデオ店に勤務していたタランティーノ同様の根っからの映画マニアで、映画評論家から監督へと転じたピーター・ボグダノヴィッチのコメディ『ニッケルオデオン』(1976)から。
映画愛あふれる物語は、こんなキャプションから始まる。
「Moving Pictures」始まりの頃、大手製作会社は弱小相手に競うつもりはなかった
「Patents Company」をつくり、小者を押さえこもうとしたのである
20世紀初頭の映画界は、特許を多数もつ発明王トーマス・エジソンが、競争相手を次々と提訴する状況にあった。
そして、1908年、エジソン・スタジオ、バイオグラフ・スタジオをはじめとする「大会社」が、「Motion Picture Patents Company(MPPC)」なるトラストを組んだ。
加盟会社以外は、権利金を支払わなければ、製作も配給もできない取り決めで、「小者」にとって大きな負担となった。