6月1日の午後3時40分頃、東京都練馬区の住宅から「息子を刺殺した」という110番通報があり、中央官庁で事務次官を経験した76歳の容疑者が逮捕されたことが、1日夕刻に広く報道されました。
このニュースを私が目にしたのは、日本国内と7時間の時差があるドイツのベルリンで、仕事の準備をしようと、インターネットにアクセスした時でした。
ドイツ時間の朝で、ただちに想起したのは数日前、5月28日に川崎で発生した無差別殺傷事件でしたので、高齢化するニート、引きこもりという切り口で前回のコラムを即日入稿しました。
時事の話題であり、編集部のご判断ですでに入稿していた「チバニアン」の続編に先立って公開していただきました。
練馬事件の捜査が進むにつれ、川崎事件が練馬事件の引き金を引いた経緯などが明らかになり、幾重にも言葉を失い、考え込まざる得ない状況になっています。
これらについて、一般のマスコミが触れないであろう切り口から、問題を考えてみたいと思います。
究極の「再発防止」だった練馬事件
何より衝撃的であったのは、練馬事件の実行犯と考えられる、元事務次官経験者のKH容疑者が「川崎事件があったから、息子を刺した」と供述している点でしょう。
6月1日土曜日、練馬区のKH容疑者宅に隣接した小学校で運動会が開かれ、子供たちの歓声や競技紹介のアナウンス、運動会特有の音楽などが聞こえてくると、事件で命を失ったKE被害者は「うるせぇんだよ、あの子供たち、ぶっ殺してやる」などと叫び、激しい口論になったと伝えられます。
かねて覚悟していた父親のKH容疑者は、意を決して台所に赴き、包丁を手にすると、息子の胸から首、腹など数十箇所をめった刺しにし、完全に絶命させたうえで、自ら「息子を刺し殺しました」と110番通報した、とされています。
こと、ここに至る道のりは短いものではなく、ほぼ30年に及ぶと思われる、加害者=被害者一家のたどってきた歴史すべての重みがかかっていると考えるべきでしょう。
しかし、事件が起きる直前に限って、報道されている情報を確認してみると、以下のような時系列になるようです。