大使館関係者によると、ロシアにおいてはプーチン首相の指示となると、それはもう絶対的なものであり、これを万難を排して実行することが組織のトップには求められているのは知っている。

日本にも災害専門の支援対策チームの設立を

大使館前に置かれた記名帳に書かれた日本国民への連帯の言葉。我々のやれることは何でもするというトーンが市民からロシア政府まで貫かれていて、難民1万人をロシアが受け入れるという話までメディアに出ている

 しかし、今回のようにはっきりとその過程を見ると、改めてプーチン首相の指導力、決断力を見る思いがする、ということであった。

 物事決定におけるスピード感。これは特に自然災害の場合、最も重要な要素であろう。災害専門の支援対策チームとしては米国のFEMAが有名だが、我が国でも、そろそろ同様の組織を考える必要が出てきている。

 それにしても、今回の震災がこれだけの国際的な注目を呼ぶ背景には、間違いなく人類史上にも残る地震+津波被害と併せて、日本のような先進工業国でしか起こりえない原子力発電所における予想外の緊急事態、というものがある。

 そして、各国は既にそこに気がついていて、米国、中国、ドイツ、などすべての救援隊に原子力の専門家が入っている。それをロシアが黙って見ているはずもない。

 チェルブイリでの政府による情報隠蔽が、その後、国を滅ぼすことになるという歴史を持つロシアが、日本政府の発表をそのまま受け取るはずもない。

福島の事故で原発輸出を妨げられたくないロシア

 また、ソ連がロシアに成り代わった際、多くの研究所、施設が閉鎖された中で、モスクワ郊外にあるクルチャトフ原子力研究所は、その広大な敷地とともにしっかりと生き残った。

 そこには、ソ連時代に建設された原子力発電所が引き続き稼働していること、またロシアは国家戦略として原子力発電所建設を国の輸出産業に育成していきたい、という理由があったからだ。

 福島原発事故がロシアの原発輸出の障害になってはならない、という命題が見え隠れする。

 かくして日本の福島原発を舞台に、世界の先進各国による情報入手戦争の幕が切って落とされた、などと言うのはうがちすぎだろうか。