コンビニや飲食店で働く外国人の姿が珍しくなくなった。単純労働のアルバイトは、もはや彼らなしでは勤務シフトが回らないのが実情だ。外国人労働者問題の現場を長年にわたって取材してきた出井康博氏が、外国人留学生の知られざる実態に迫る。前回は、「夢はコンビニでのアルバイト」と語るベトナム人留学生タン君が日本へやってきた背景について紹介した。後編では変わりつつある留学事情をお伝えする。(JBpress)
(※)本稿は『移民クライシス』(出井康博著、角川新書)の一部を抜粋・再編集したものです。
でっち上げの書類でビザを取得
(前回)夢は「コンビニ」のバイト、外国人留学生のウラ事情
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56143
タン君のように留学費用を借金に頼る外国人は、本来は留学ビザの発給対象にはならない。留学ビザは、母国からの仕送りが望めるか、もしくは奨学金を受け取るなどして、アルバイトなしで日本での生活を送れる外国人に限って発給されるのが建前だ。
しかし、その原則を守っていれば留学生は増えない。そこで日本政府は、留学のための経費支弁能力を有さない外国人にまでビザを発給している。そのカラクリはこうだ。
途上国の留学希望者には、自らの経済力を示すため、親の年収や銀行預金残高などの証明書の提出が求められる。留学ビザ取得に必要な額は明らかになってはいないが、年収、預金残高とも、日本円で最低でも200万円程度が必要となる。
途上国の人にとっては、よほどの富裕層でなければクリアできないハードルだ。そこで彼らに留学を斡旋するブローカーが、でっち上げの年収や預金残高の記載された証明書を準備する。
ベトナムのような新興国では、行政機関や銀行であろうと賄賂(わいろ)さえ払えば、でっち上げの数字が並ぶ“本物”の証明書は簡単に手に入る。そうして準備された書類を日本側が受け入れ、留学を認めているのだ。ビザを審査する法務省入国管理当局、そして在外公館も「数字の捏造(ねつぞう)」をわかってのことである。
でっち上げ書類の準備は、留学生個人では難しい。そこにブローカーが介在する余地が生まれる。留学生から手数料を取り、留学ビザに十分な書類を揃えるわけだ。タン君もそうやってビザを得た。