コンビニや飲食店で働く外国人の姿が珍しくなくなった。単純労働のアルバイトは、もはや彼らなしでは勤務シフトが回らないのが実情だ。なかでもコンビニのアルバイトは、外国人留学生にとっての「憧れ」であるという。彼らは、なぜ、どのようにして日本にやってきたのだろう。外国人労働者問題の現場を長年にわたって取材してきた出井康博氏が、外国人留学生の知られざる実態に迫る。(JBpress)

(※)本稿は『移民クライシス』(出井康博著、角川新書)の一部を抜粋・再編集したものです。

勉強する時間がない「留学生」

 午前8時、東京・港区―。東京タワーを後ろに望む大手牛丼チェーン店から、リュッサック姿の若者が飛び出してきた。細身の長身、日本人よりもやや浅黒い顔とつぶらな瞳が印象的なベトナム人留学生のタン君(24歳)である。

 東京のような都会では、飲食チェーンで働くアジア新興国出身の留学生の姿は、もはや当たり前の光景となった。ただし、彼ら留学生たちの勤務がより増えるのは、客の減る深夜の時間帯だ。徹夜のシフトは日本人が敬遠し、アルバイトの確保が難しい。逆に留学生にとっては、時給が割り増しとなる深夜の仕事は人気が高い。

 タン君も、前夜22時からの徹夜勤務を終えたところだ。彼は店を後にすると、勤務先のオフィスに向かう人たちの流れに逆らい、駅へと急いだ。1時間後の午前9時からは、30分ほど離れた場所で、今度はうどんチェーン店での仕事が始まる。そして午後1時まで働いた後、すぐに日本語学校の授業に出席する。

 日本語学校の授業は1日中あるわけではない。午前と午後の部に分かれていて、留学生はどちらかに在籍する。学校以外で勉強しなければ、アルバイトに割ける時間はかなりある。タン君は午後の部の留学生だが、牛丼店で働く週3日は2つのアルバイトに追われ、勉強はおろか寝る時間すらほとんどない。

「いつも、眠いです。勉強は・・・あまりできませんねえ」