ベトナムの首都ハノイで行われた米朝首脳会談では、北朝鮮の非核化とそれに見合うおみやげ(制裁解除、終戦宣言、支援)を決めるという合意ができず、したがって共同宣言に署名できなかった。
客観的に見れば、両国とも相手国の狙いが明確に分かったことは、交渉の2歩や3歩の前進だと言える。
今回、米朝が合意できなかった部分は、北朝鮮が非核化を完全に実施できるかどうかの核心部分である。
それは、北朝鮮が進めてきた大量破壊兵器すべてのリストを提供することである。特にウラン濃縮施設がリストに入っていることと、その査察と廃棄が問題だ。
このほかに私が注目しているのは、今回の会談で北朝鮮国家の期待に応えられず、金正恩委員長が人生で「初めての屈辱」を味わったことだ。
北朝鮮の今後の方向性や戦略は、「金正恩委員長が受けた屈辱に対する怒りが抑えられるのか」によって大きく異なるのではないかと考える。
どう転ぶにせよ、金正恩委員長の腹一つで決まるだろう。だから読めない。
1.北朝鮮は計り知れない期待を抱いていた
駅のホーム一面に真っ赤な絨毯を敷いて、盛大な見送りを受け、金正恩委員長は特別列車に乗り込んだ。
今回のような盛大な見送りの写真は、これまで朝鮮中央通信に掲載されなかったと、私は記憶している。
同通信は、「敬愛する最高指導者が第2回朝米首脳の対面と会談で立派な成果を収めて、無事に帰国することを心から願った」と期待を込めて書いた。