そして、トランプ大統領が罠に嵌って大胆な決断をしてくれると期待したのだと思う。

 会談初日の「自信はあるか」との記者の質問には「予断はしない、私の直感では良い結果が出ると信じている」と答えた。

 制裁解除と終戦宣言の成果を欲しがり、前のめりになっていたのは金正恩委員長だった。

 金正恩委員長の経験の少なさ、中国や韓国とは上手くいったという実績が、甘い期待を持たせることになったのではないだろうか。

3.会談が決裂した最大の理由は何か

 トランプ大統領は会談後の記者会見で「北朝鮮は経済制裁の全面解除を要求してきた」と明かしたうえで、米国が寧辺の核施設や北朝鮮が公表していない核関連施設の査察や廃棄を求めたところ、金正恩委員長氏が難色を示したため「立ち去ることを決めた」と述べた。

 米朝会談で合意に至らなかったのは、「北朝鮮の要求は全経済制裁解除だったから」とトランプ大統領やポンペオ国務長官が述べている。

 私は、実質はウラン濃縮施設のリストアップと廃棄を求めたことが最大の理由だったと考えている。

 ウランの濃縮については、遠心分離機を数千台揃えさえすれば、地下の施設だけでなく通常の工場でも発見されずに核物質を製造することができる。

 北朝鮮は、ウラン濃縮施設について明確にリストに挙げて、隠蔽して核物質を製造することはないということを表明しなければならない。