(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩労働党委員長との会談は合意に至らず、交渉が中断した。この結果はワシントンで超党派の賛同を得ている。
だが、今回の米朝首脳会談は事実上の“決裂”であり、北朝鮮の非核化に向けての今後の展望は生まれていない。その一方、米側の一部には、北朝鮮との外交交渉はもう無理だとして、制裁の再強化や軍事オプションを求める強硬論が出てきた。今後の米朝関係を左右するかもしれない新しい動きとして注視される。
「妥協しなかったことは正しかった」
トランプ大統領はベトナム・ハノイにおける第2回米朝首脳会談で、金正恩委員長からの「寧辺の核施設の破壊あるいは査察と引き換えに経済制裁の解除を」という提案を断り、会議の席を立った。この結末は、ワシントンで日ごろトランプ政権に激しい非難を浴びせる民主党側からも同調や賞賛を得た。
下院でトランプ糾弾の先頭に立ってきたナンシー・ペロシ議長(民主党)は、「金正恩氏が米国大統領と対等な国際的脚光を浴びたことは金氏の勝利といえそうだ」と金氏を持ち上げる一方で、「トランプ大統領が悪い取引に応じなかったことは正しい」と述べた。ペロシ議長がトランプ大統領の言動に前向きな評価を示すことはきわめて珍しい。
また、上院の民主党院内総務のチャールズ・シューマー議員も、「トランプ大統領が単に大々的な写真撮影のために合意を成立させることを拒み、妥協しなかったことは正しかった」と語った。