「背中のヒレを使った一杯のスープのために、拷問され殺されてしまう」
この一杯のスープとは、中国の宗の皇帝が考案。さらに、時の西太后の好物で知られ、最高格の中華宴席「満漢全席」にも欠かせない、「中国料理の王様」の異名を持つ「フカヒレ(翅)スープ」のこと。
中国では「翅・参・鮑」と呼ばれ、乾燥した翅(フカヒレ)、海参(ナマコ)、鮑(アワビ)の3種は、伝統的に高級食材とされ、「冨と権力」の象徴で、春節(旧正月)や結婚式などの祝い事には欠かせないものとされてきた。
急速な経済発展に伴い、お金持ちになった中国人の冨の象徴と胃袋を満腹させる一番人気の“調度品”であるはずだが、フカヒレの消費量が中国本土で約80%(2010年から2014年調査)も激減したことが明らかになった。
国際環境保護団体「ワイルドエイド」が報告したもので、中国での中国人の若年層などの食習慣の変化や環境問題への関心、さらに、汚職・腐敗を一掃したい習近平政権の公式宴会などの禁止令が背景にあるとしている。
その上で、フカヒレの原材料になるサメの世界の個体数が乱獲で直近10年で、90%も激減しているとし、そのうちの7割が、フカヒレを目的にしていることも明らかにした。
世界で乱獲された約8割のサメが、中国本土、香港、マカオ、タイ、ベトナム、インドネシアなどで中国料理の高級食材として、フカヒレスープなどに料理されているという。
ワイルドエイドの報告書によると、フカヒレ料理は、(禁止されているはずの)香港で、最大手チェーン店を含むレストランのほぼ全店で発見された。
このほか、マカオでは中国人が大顧客のカジノホテル33軒のうち31軒で、さらに祝い事など挙式披露宴での宴席で約7割が公然と賞味されている実態が発覚した。
また、中国以外のアジア地域では、中国人の中間層や富裕層の海外渡航人気やアジアの富裕層拡大などを背景に、例えばタイでは「調査の結果、6割がフカヒレを将来的に食べる予定だとしている。