アジアのタックスヘイブンの秘境、マレーシアの連邦直轄地のラブアン島にあるオフショア国際金融センター。日本の三菱UFJや三井住友銀行、大手保険会社なども参入。

 「我々は断固戦う。起訴は間違っている」

 世界最大級の米大手金融、ゴールドマン・サックス(GS)が窮地に立たされながらも、「宣戦布告」を言い渡した相手は、マレーシア政府。

 発端は、先週、マレーシア検察当局が、同政府系投資会社「1MDB」の巨額不正資金流用事件に絡み、1MDBの債券発行を担ったゴールドマンサックスと、元幹部2人ら個人4人を証券関連法違反の疑いで刑事訴追したからだ。

 このゴールドマンの元東南アジア統括責任者などの元幹部2人(ティム・ライスナー被告、ロジャー・ウン被告)らは、その1か月半前の11月1日、米司法省により、外国公務員への贈賄を禁止する「海外不正腐敗行為防止法違反」の罪などで、すでに起訴されていた。

 2010年4月、証券詐欺で米証券取引委員会(SEC)から提訴され、世界の金融界に激震が走った、いわゆる「ゴールドマン・ショック」を覚えている方は多いだろう。

 今回の不正発覚で、同社の株価は、その時以来の低迷が続いている。

 本コラムでは、先月、ゴールドマンが組織ぐるみで関与し、最高幹部など経営陣の指示が働いていた可能性が高くなっていると指摘。

 「ゴールドマンに騙された。不正の証拠を握っている」とゴールドマンを名指しで糾弾するマレーシアのマハティール首相が、「ゴールドマンへの刑事訴追を想定している」と、報じた矢先だった。

 ゴールドマンは2012年から2013年に1MDBの65億ドル(約7400億円)の債券を発行。相場の約6倍という破格の6億ドルの報酬手数料を得ただけでなく、27億ドルを1MDBから不正流用した疑いももたれている。

 11月の米司法省による起訴では、法人としてのゴールドマンは含まれていなかった。