(小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)
水星を肉眼で見たことがありますか。
この2月下旬から3月初めは水星が太陽から離れて見えるので、観測のチャンスです。夕日が沈んで30分後の18時ころに、西の空を眺めてみてください。地平線の近くに白いほのかな光点があったら、それが水星です。
先日1月15日(日本時間)、九州大学の高橋太准教授らの研究グループが、「水星が持つ特異な磁場の謎を解明」したと発表しました。
また2018年10月20日1時45分(協定世界時)には、「国際水星探査計画ベピコロンボ」が打ち上げられました。ベピコロンボは2025年に水星に到着し、水星の起源や磁場について調べます。
さて、あの夕暮れ空のほのかな光点は、いったいどんな謎を秘めているのでしょうか。ベピコロンボはそれはどうやって解明しようというのでしょうか。以下に解説しましょう。
水星〜太陽系最大の寒暖差
水星は太陽に最も近い惑星です。太陽からの平均距離(軌道長半径)は地球の0.3871倍で、水星から見た太陽の明るさは地球から見た明るさの約7倍です。
水星の1昼夜は地球の176日です。地球の88日間続く水星の昼の間、地球の7倍の明るさの太陽光によって地表は400℃以上に熱せられ、同じ時間続く夜の間には-200℃以下に冷えます。水星の地面に転がる石ころは太陽系で最大の寒暖差を経験しています。