人のせいにするのが簡単であるからこそ
「あそこを抑えていれば・・・」
「あそこで一本出ていれば・・・」
「あそこでエラーしなければ・・・」
そう考えることには、まったく意味がない。
大事な場面で誰かが打たれても、打てない打席があっても、エラーしてしまっても、それでも勝つときは勝つ。それも含めて野球なのだ。それを、負けたときには誰かに敗因を押し付けて、自分は言い訳をしている。
ただ、それは必ずしも人間性の問題というわけでもない。いつもは人のせいにしないんだけど、そうしたくなるほど疲れ切っていたり、調子が悪かったりというケースもある。
だからベンチはそれを嘆くのではなく、人にはそういうことが起こるんだということを、知っているかどうかが重要になってくる。「ああいう選手なんだ」と評価を決め付けるのではなく、何とかそこを抜け出させよう、乗り越えさせようと考えてみる。
でも、こっちも人間だから、必死に戦っているとカチンとくることもあるし、負けると悔しいし、イライラもする。そんなこんなをみんな踏まえて、対処する必要がある。
人のせいにするのが簡単だから、人としてどうあるべきかがわからないと、野球はちゃんとできない。そして、それがわかってくるとより楽しいし、面白いし、どうして野球というスポーツが、この長い年月、残ってきたのか、その意味もわかるような気がする。
言い訳しないこと。それをしたら、こっちの負けだ。
(『稚心を去る』栗山英樹・著より再構成)
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