北朝鮮は、アメリカとの交渉に応じるポーズを見せただけで、いまだに核・弾道ミサイル開発を続けています。このままでは、早晩アメリカに届く実戦級核搭載弾道ミサイルを完成させてしまうでしょう。

 詳細には述べませんが、ICBM(大陸間弾道ミサイル)を高確率に迎撃するためには、弾道ミサイルの発射後の早い段階で(実際には、エンジンが燃焼中のブースト段階での迎撃は困難なため、エンジンが停止し、慣性で上昇を続けているミッドコース段階の初期に)迎撃を試みることが重要です(この段階で一部でも迎撃できれば、その後の迎撃チャンスに再度試行することできる上、弾頭が分離される前なので、迎撃すべき目標数を大きく減らすことができます)。

 しかし、北朝鮮からアメリカに向かうICBMは、図に示すようにロシア沿海州方面を北北東に飛翔します。このため、ターミナル段階の初期に迎撃を行うためには、北海道からさらに北東の地点から迎撃ミサイルを発射する必要性があります。

北朝鮮からアメリカに向かうICBM(『北方領土秘録 外交という名の戦場』より)

 日本が配備をすすめる陸上型のイージス、イージスアショアは、山口県と秋田県に設置される予定であり、この2カ所からではアメリカに向かうICBMの迎撃は困難です。

 では、どこが適切かと言うと、理想的な候補地が北方領土、択捉島なのです。択捉島が配備適地であることは、アメリカがイランの弾道ミサイルからヨーロッパを防衛するために設置しているイージスアショア(EPAA:European Phased Adaptive Approach)の配備地を見れば分かります。

 EPAAは、何度か計画内容が変遷し、現在はヨーロッパ防衛を目的としたシステムとされています。しかし、もともとはアメリカを防衛するものとして計画されたものですし、使用する迎撃ミサイルのアップグレードで、現在もアメリカ本土の防衛に寄与するものと考えられています。

イランからアメリカに向かう弾道ミサイル(『北方領土秘録 外交という名の戦場』より)