このような状況は、多くの日本人が引きずる「1989年の常識」に変革を要求している。極論になるが、もはやJICA(国際協力機構)はその使命の大半を終えたと言ってもよい。日本ではいまだに「開発途上国の人々は貧しく、助ける必要がある」という昭和の観念から抜け出せない人も多いが、ことアジアを見る限り、援助すべき国はなくなりつつある。もし、貧しい人がいたとしても、彼らを助けるべきなのは、その国に住むベンツを乗り回す人々だろう。
日本の高級住宅街はアジアの富裕層だらけに?
平成の次の時代、日本は確実にアジアの普通の国の1つになる。特に優越した豊かな国ではなくなる。そんな日本は、急増するアジアの富裕層とどう付き合えばよいのであろうか。これは、平等を尊ぶ日本にとって、極めて難しい課題になる。
現在、アジアの富裕層は銀座のデパートで高級品を爆買いしている。中国人が多いとされるが、これからは東南アジアや南アジアから来る人も確実に増えるだろう。すでに客単価はベトナムからの観光客が最も高いというデータもある。
今後、日本の高級住宅街はアジアの富裕層が住む場所に変わるかもしれない。それを多くの日本人はどのような目で見るのであろうか。「日本が買われる」と批判的にみるのか、「爆買い」をビジネスのチャンスと見るかによって、対応も変わろう。いずれにせよ、これまで以上に、日本は格差拡大とともに発展するアジアとの距離感に悩む時代になる。
昭和の感覚で次の時代を生きることはできない。今年は、新たな年号の下で将来について語る機会も増えると思うが、その際には、大きく変わったアジアの状況を頭のどこかに入れて議論してほしい。