山手線の内側に書こうとすると、品川や大崎、五反田すら通り過ぎて目黒あたりから書き始めないと文字が入りません。無理です。

 それでは、と山手線の外に書こうとすると、先ほどの「高速鉄道りんかい線」「東京モノレール」などが犇めき、こちらもこちらで「天王洲アイル」「大井競馬所前」「流通センター」と、長い駅名がずらずらと続いている。

 つまり、このままじゃレイアウトできない、ということですね。

 抜本的、それも相当本腰を入れてのレイアウトの変更をしないと、こんな8文字名前の駅など、山手線の中に書き込むことはできない。

 皆さんも、頭の中で実際にレイアウトを思い描いて、脳内シミュレーションしてみてください。

 例えば、常磐線我孫子駅の先、土浦の手前に「ひたち野うしく」駅があります。万博中央駅から転じた駅で今回のものよりは少ない「7文字」ですが、周囲のスペースを含めてやたらと存在感があります。

 これと同じというか一文字多いわけですが、これだけのスペースを日本語とアルファベットで品川や流通センターがひしめくこのエリアに読みやすくレイアウトするなら、相当手がかかるのは、一目瞭然でしょう。

 「そんなの、新たにデザインすりゃいいだけのことじゃないか・・・」

 言うんですよ、そういうことを、なーんも考えないでアイデア出してるつもりの広告代理店とか、プロデューサーとか、現場を知らない人間が。

 私も『題名のない音楽会』というテレビ番組の監督時代、この種の現場知らずのために、どれくらい無駄な時間と労力をかけさせられたか、知れたものではありません。

 変えればいいと言っても、変えられないものもあります。例えば車内路線図の面積などは変えようがないでしょう。

 比較的行儀よく、細密充填に近い形でいまレイアウトされている品川、田町近在に、余計な8文字を入れるとすると、下手をすると山手線の半径から拡大するようなデザイン変更となるかもしれません。

 そうなると、文字通り「しわよせ」を食うのは周辺部でしょう。