結言
中国は、「科技強国になる」「2030年までに世界のAIイノベーション・センターになる」などの明確な目標を設定し、国家ぐるみでその実現に向け邁進している。
また、中国は、目的のためには手段を選ばない、汚い手段を使うことを厭わないやり方を採用している。
その結果として、米中のAIなどのハイテク覇権争いにおいて、圧倒的に優位な立場にあった米国を中国が激しく追い上げる状況になっている。
この状況に危機感を抱いた米国は様々な方策を駆使して、ハイテク覇権争いで中国に勝利しようとしている。
それでは日本の状況はどうであろうか。
日本のAI開発に関する国全体としての明確な戦略や目標はなく、国家ぐるみの態勢にもなっていない。
例えば、IT戦略の中で、安全保障(軍事)の視点が欠如している。その典型例が「AI戦略実行会議」であり、防衛省からの参加者はいない。
AIを国家レベルで考える場合、安全保障は不可欠な観点であることを考えれば問題があると言わざるを得ない。
また、我が国では、アカデミア(大学など)における軍事分野の研究に対する拒否感が強すぎ、AIの軍事適用などに対するアカデミアの拒否感にも強いものがある。
その一方で、中国の各種工作(サイバースパイ活動、会社・大学からの知的財産の窃取)に極めて甘く、実効的に対処できてはいない。
日本は、中国による各種工作にあまりにも無防備である。
我が国がAIなどのハイテク技術において米中に完全に置いていかれないためにはやるべきこと(AIなどのハイテク技術に関する国家ぐるみの態勢の構築、憲法の改正、スパイ防止法の制定、民間企業・アカデミア・マスメディアにおける危機意識の向上など)をスピード感を持って遂行すべきだ。