大統領はさらに「水があるときに櫓を漕げという言葉があるように、機会を生かせるように最善を尽くしてほしい」と発言した。

 ここまで読むと、決して単純な自慢話をしようとしたわけではないことも分かる。

 自動車産業や造船産業が今なお苦しいことを認め、政府もこれに万全の支援体制で臨めという指示だと読むこともできる。ある大学教授はこう話す。

 「経済は気だ、とも言う。悪い話ばかりだと、経済はもっと悪くなってしまう。大統領の発言は、こういう良い話もあるが、と前触れを置いて、真意は、政府もきちんと対応するという指示だった」

 先の韓国紙デスクはこう見る。

 「参謀も一生懸命統計を探したのだろうが、よりによって、もっとも大変だ、と話題になっている自動車を例に取り上げたから、どういう現状認識だ!という批判を浴びてしまった」

 「水がある時に櫓を漕げ、という発言も、仕事不足で明日の心配をしている中小部品メーカーの経営者を刺激してしまった」

 ラジオの経済討論番組を聴いていたら、参加者がこんなことを言っていた。

 「マーク・トゥエインの有名な言葉に、嘘には3つある、嘘、大嘘、そして統計だ、というものだ」

 「今回の大統領発言を、野党や一部メディアは嘘と言っているが、それは言い過ぎだ。だが、統計はどう使うかでまったく異なる解釈ができる。だから注意すべきだった」

 悪い話ばかりだから、「良いニュースがあった!」と統計に飛びついて、かえって批判を浴びてしまった。

 国務会議の冒頭発言がこれほど話題になるというのは、「経済」がそれほど深刻なテーマになっているということの証でもある。