たった1カ月前には中東で最も安定した国と思われていたエジプトが、このような状況になるとはほとんどの人が考えなかったに違いない。しかしエジプト動乱がかくも大きくなってみると、改めて日本のこの国との向き合い方が問われているように思われてならない。
テレビが後手に回ったエジプト動乱報道
やや別件で恐縮ながら、1月末から始まったフジテレビの「コンパス」という企画に参加している。
これは、今まで中央のキーステーションから放射状・一方向的に情報が送られてきていたマスメディアの状況が、IT化とネットワークの普及で多層化している中、テレビも1つの見解だけを流すのではなく、複数有識者のコメントを並列併記し、さらにはその意見分布などまで含め視聴者に提供していこうという、従来のテレビ業界になかった意欲的な取り組みと思っている。
当初は70人ほど、最終的には100人以上の有識者「オピニオンリーダー」たちに、この「コンパス」上で、共通の質問に答え、その理由などコメントも編集なしに、そのまま見せるという企画だ。
言って構わないことと思うが、この「オピニオンリーダー」は一切無償だ。ボランティアというより、営利を超えて新しいメディアの時代の「情報公共圏」を作ろうという取り組みだと理解している。
「コンパス」の初回の質問は「小沢一郎氏の出処進退」で、私は小沢氏云々以前に検察審議会の制度自体に疑義を呈するコメントをした。
2回目では「エジプト動乱の日本でのテレビ報道についてどう考えるか?」という、多くのコメンテーターがなかなか答えにくそうな質問だった。
テレビ番組としては土曜日早朝5時からの「新・週刊フジテレビ批評」で回答が紹介されたが、ちょうど「ムバラク辞任」の一報が重なり、期せずして大変タイムリーなことになってしまった。
22人の「オピニオンリーダー」が回答していたが、私の答えは煎じ詰めると「ネットに完全にテレビが遅れる時代、いったいどうやってテレビ固有の情報信頼価値を創り出していくか?」という問いかけを、テレビメディアに投げかけるものを記してみた。
エジプト動乱に関する情報は、ネットでアルジャジーラや海外の報道、放送を見ている方が、明らかに早く確実、情報量も多く、かつ分析など鋭い突っ込みもなされている。
むろん情報の真贋を見極める必要があるが、少しでも中東の問題に関心があれば、こちらを見るのが最も手っ取り早い。