日米同盟に亀裂を入れたい中国
トランプ政権は米中貿易戦争を開始し、さらにアメリカは、中国との軍事衝突をも含んだ「大国間角逐」に打ち勝つことを国防戦略の根本に据え、南シナ海や台湾海峡での対中国対決姿勢を強化させつつある。そんな状況に直面している中国にとって、日米同盟を「分断する」、そこまでいかなくとも「弱体化させる」あるいは「ギクシャクさせる」途を模索していることは確実である。
日本がアメリカの軍事的後ろ盾を失った場合、すでに自衛隊を上回る戦力を擁する中国海洋戦力(海軍、空軍、ロケット軍)にとってものの数ではないことは言うまでもない。
アメリカにとっても、日本国内に点在する軍事施設を、中国との軍事衝突の際に前進拠点として「自由自在」に使用できなくなってしまうことは由々しき問題である。なぜならば、中国の前庭ともいえる南シナ海や台湾海峡、そして東シナ海で中国軍と対峙するアメリカ軍は、全て太平洋を超えて遠征しなければならなくなるからだ。
前進陸上拠点としての日本が必要な米軍
かつて中国海洋戦力が弱体であった時期には、たとえば1996年のいわゆる第3次台湾海峡危機に際しては、アメリカが派遣した2セットの空母機動部隊(インディペンデンス空母戦闘群、ニミッツ空母戦闘群)の前に中国軍は手も足も出ない状況であった。
中国は、アメリカによって面子を完全に潰された苦い経験を契機として、空母部隊を中心とするアメリカ海洋戦力による中国近海への接近を阻止するための海洋戦力(各種ミサイル、爆撃機、戦闘攻撃機、水上戦闘艦、潜水艦、機雷など)の強化に邁進した。
20年にわたる臥薪嘗胆の時期を経て、現在、中国は台湾海峡のような中国沿海域はもちろんのこと南シナ海や東シナ海に進入した米海軍空母や強襲揚陸艦を撃沈するための対艦弾道ミサイルをはじめ、アメリカ軍の接近を阻止するための戦力を構築し強化させ続けている。