ソウル交通公社は、13兆ウォンもの累積赤字を抱えているのだ。

 こんな経営でも、正規職への大量転換を進めているのは、もちろん、ソウル市直営の「公社」だからだ。

 いくら何でもずっと放置はできないのだが、最高責任者である市長は「無料乗車のせいで政府に対策を」という。

 この「無料乗車」というのは、改札口を突破したり、「キセル乗車」をする乗客のことを指しているわけではない。

高齢者無料制度

 「高齢者無料制度」のことを指しているのだ。

 韓国では、老人福祉政策の一環で、1980年に満70歳以上の高齢者に対して地下鉄料金を半額にする制度が導入になった。

 これが、65歳に引き下げられ、さらに1984年から「無料」になった。

 制度ができた頃、韓国は「若い国」だった。だから地下鉄の経営問題が起きるなど想像もできなかった。

 ところが、いまや「高齢社会」になった。「無料乗車」の比率が急速に高まっているのだ。

 ソウル交通公社が野党議員の求めに応じて提出した資料によると、2017年のソウル地下鉄1号線~8号線の乗客数は18億6000万人。このうち、「無料乗車」数は、なんと2億7000万人。全体の14.6%を占めた。