安易な気持ちで田舎に移住すると後悔することに?(写真はイメージ)

(筆坂 秀世:元参議院議員、政治評論家)

転職は人生の一大事

 最近、お気に入りのCMがある。バカリズムと松岡茉優が出演する、エン・ジャパンが運営する総合求人・転職支援サービス『エン転職』のCMだ。同社のホームページによると、「en」というのは、「縁」からきているそうである。このCMの決め言葉は「転職は慎重に。」である。「売り手市場で転職者優位な状況が続く今こそ、安易な転職で後悔しないよう、慎重に転職活動に臨むことが大切。十分に情報を収集した上で、真に活躍できる仕事・会社を見つけていただきたい。そんな想いを込めたメッセージ」だそうである。

 それにしても世の中変ったものである。私が就職して働き始めたのは、1966(昭和41)年である。高卒であれ、大卒であれ、将来の転職を考えて就職した人は皆無に近かったと思う。終身雇用が根付いていたこともあったが、当時はすぐに仕事を変えるような人間は、辛抱が足りない人間として見下されたものである。

 それがどうだろう。今では転職など、ごく普通のこととして行われているようだ。あまり転職を考えないのは、公務員ぐらいではないのか。現在の転職事情は、古い人間の私にはもはや分からないことだが、恐らく転職ができるのは、その人がある優秀さを備えているからだろう。先日もテレビを見ているとブラック企業など5社を渡り歩いてきた青年が、現在の会社では指導的な立場にあることを事もなげに語っていた。

 しかし、だからといって同じ会社で働き続けることが、時代遅れというわけではない。安定した雇用や退職金など、その強みも依然として多くあるはずだ。また転職がいつでも成功するとは限らない。転職を繰り返すだけで、物にならない場合もあるはずだ。だとすればやはり辛抱が足りなかったということになりかねない。

 いつの時代もどんな職業に就くかは、人生の一大事である。やはり「転職は慎重に」である。