10月1日は大手企業の「内定式」だった。来春卒業予定の学生の内定は10月からというのが経団連の決めた就活ルールだが、実際にはもう3年生の就活が始まっている。説明会は3年生の3月、面接は4年生の6月に解禁というのがルールだが、それを守っている企業はほとんどない。今年も5月末の段階で、6割の学生に内定が出ていた。
しかし今後は、この風景も変わるかもしれない。経団連の中西宏明会長は、9月に「2021年卒から就活ルール廃止」という方針を提案した。これまでだと大学が反発して政府が出てきて調整するという流れになるのだが、今回は強く反発する声が聞こえない。もう就活ルールに意味がないからだ。
新卒一括採用はなぜ続くのか
学生を新卒で一括採用する日本独特の雇用慣行には批判が強い。普通の国では大学を卒業してから就活するが、新卒一括採用だと学生は(企業を選ばなければ)ほぼ100%就職できるので「就職浪人」が少ない。これは学生には有利な雇用慣行で、それなりに合理性がある。
しかし企業は、労働者の技能をみることができない。5月に内定を出すと、3年生までの成績しか見ることができない。卒業できるかどうかさえわからない。職務内容を細かく規定する(日本以外の)企業では、その業務に能力があるかないかわからない学生を採用することはありえない。
新卒一括採用が可能なのは、企業が学業成績を無視しているからだ。日本の大企業で要求されるのは専門知識ではなく、終身雇用の中で円満な人間関係を保つ能力だから、大学の成績にはほとんど意味がない。
現実には文字通りの終身雇用はほとんどないが、採用するときは定年まで解雇できないリスクを織り込んで採用する必要がある。だから日本の雇用慣行を変えないで、新卒一括採用を批判してもしょうがない。
企業にとって大学教育は意味がないから、学生は授業より就活に必死になり、大学もまともな教育をせず、厳格な成績評価をしない。大学教育に中身がないから、企業は学業成績を無視する・・・という悪循環で、新卒一括採用は続いているのだ。