一方で格安旅行をする若者は、エアビーの存在ほどありがたいものはない。旅先で馬鹿騒ぎをし、酔っ払い、ナンパした相手をチェックが緩いエアビー物件に連れ込んで一夜を堪能する。おそらく最高のバカンスで、最高の思い出になることだろう。その行為自体に反対するつもりはないが、こうした若者はたいがいマナーの悪さが目立つため、同じ建物の中に暮らす地元住民にとっては迷惑以外の何物でもない。もちろん、エアビー物件をもっとスマート、かつ丁寧に利用している旅行者もいるだろうが、これが欧米の人気都市でエアビーが引き起こしている現実の一面であるのは間違いない。
問題は地元民が被る迷惑だけではない。さらに深刻な問題がある。地元に住んでいた人々が、住まいを奪われかねない事態に直面しているのだ。
長期賃貸より旅行客に短期で貸した方が大きい儲け
アパートの家賃が跳ね上がっていると書いたが、バルセロナの物件の賃料は、5年前に比べ、1.5倍になっている。不動産オーナーとしては、賃貸住宅として特定の人に長期的に貸し出すより、高い賃貸料金で旅行客に短期で貸し出したほうが、断然儲けられる。結果として、長年、住み続けてきた地元民が立ち退きを強いられるという最悪の事態が発生しているのだ。
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この動きに怒りを見せる住民が2016年、ついに「外国人排斥運動」を起こした。報道では人種差別行為のごとく扱うものもあったが、冷静に事態を眺めてみれば、それが人種差別でないことは明らかで、自らの生活を守るために必死の抵抗だった。なにしろ私のスペイン人の友人たちも家賃が払えなくなり、アパートのシェアを余儀なくされているのだ。
今年(2018年)6月、東京では観光庁や観光業界によるエアビー物件の”一斉排除”が行われた。民泊新法(住宅宿泊事業法)施行を前に、観光庁はエアビーなどの仲介業者に対して、届け出が行われていない違法物件の仲介を行わないようにすることなどを通知。それを受けてエアビーは、届け出のない4万件ほどの物件を一斉に削除、それらの物件を予約していた利用者には返金をするという騒動が勃発した。