観光庁の通知は、エアビー側にとってみれば突然の出来事で、やりすぎだった面もなくはない。私もその余波を受け、東京滞在時に何回も利用してきた大田区の物件にしわ寄せが来て、空きがなくなるというハプニングに見舞われた。ただ、観光庁のこの取り組みが必ずしも間違っていたとは思わない。
エアビーの登場で既存のホテル業界が打撃を受けるということは当然起こりえることだろうが、その問題とは別に、“エアビーバブル”で東京の不動産価格がバルセロナのように、日々高騰することは避けるべきだろう。放っておけば、2020年の東京オリンピックを前に日本人が観光客アレルギーになってしまい、お互いの関係に溝が生じてしまうという最悪のシナリオも現実味を帯びてくる。そのような意味において、地元民とエアビーとの折り合いは早い段階でつけておいたほうがいいかも知れない。
全国のタクシー運転手が一斉スト
バルセロナに話を戻すと、外国人観光客に対する嫌がらせとして、最近こんな事件が起きている。今年7月25日から8日間、総勢1万500人のタクシー運転手が大規模ストを行ったのだ。そればかりか、配車サービス「ウーバー」や「キャビファイ」などの営業停止を求め、路上封鎖や配車破壊行為を繰り返し、市内は大混乱をきたした。
実は私も、スト初日に出張があり、地下鉄やバスが動かない早朝にタクシーを使う予定だった。空港バスは長蛇の列で乗れず、結局、この日の出張をキャンセルせざるを得なかった。午後になると、タクシー運転手の集団が、キャビファイの車を囲み、蹴りつけるなどし、車両を破壊。ドライバーを負傷させる事件も発生した。
しかし、実はこの事件、タクシー運転手だけが配車の破壊行為を行ったのではなかった。後に警察の捜査で発覚したのだが、市内を走る配車を叩き壊したのは、主に外国人旅行者嫌いの反資本主義グループで、彼らはメッセンジャーアプリ「ワッツアップ」を通じて破壊行動を呼びかけていたようだ。つまり、タクシー運転手らの抗議運動を利用して、配車サービスの運転手たちにではなく、むしろ外国人旅行者たちに対し、若者たちは怒りを爆発させたのだ。
大通りのグランビアを封鎖するタクシー運転手の1人は、私にこう言った。
「ギリ(スペイン語で「外国人」を意味する蔑称)が増えすぎたせいだよ。バルセロナの問題はタクシーだけじゃない。周りを見渡せばギリばかりで、闇ビジネスがあちこちに横行している。あなたは飛行機に乗れずに仕事を諦めたというが、私だって仕事を毎日、奪われているんだよ」
このストは数日後、マドリードや地方都市にも波及。配車サービスに対抗しようと、全国のタクシー会社が連帯し、一斉にストを決行した。