私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化を見つめ、さまざまな研究活動を行っています。
本コラムでは、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。
「人は結婚して一人前」意識は少数派に
博報堂生活総合研究所が1988年から10年おきに実施している「家族調査」。同一世帯の夫と妻それぞれに同じ質問をして、反応のギャップを見るという特徴のある調査です。
前回・前々回のコラムでは、その調査結果を基に、30年間で夫婦間のパワーバランスが変化し、妻の力が強まってきたことや、夫婦の家事分担にまつわる意識と行動にも変化が生じ、家事分担の意識は高いものの実態が伴っていない「意識だけ高い系」夫が増えている状況を見てきました。
今回のコラムでは視点を少し変えて、結婚に関する「価値観の変化」について紹介します。30年の時間経過は、いったいどんな変化をもたらしたのでしょうか。
最初にご覧いただくのは「人は結婚してはじめて一人前だ」という項目。自分の家系を次代につなげていくための務めのひとつが結婚であり、それゆえ結婚することが社会的ステータスとしての「一人前の証」として認識される・・・。こうした“伝統的”な結婚観は、現在どの程度受け入れられているのでしょうか。夫・妻それぞれに回答してもらいました。
●人は結婚してはじめて一人前だと思う
夫:1988年47.7%→2018年27.8%(過去最低)
妻:1988年41.7%→2018年17.0%(過去最低)
出典:博報堂生活総合研究所「家族調査2018」(以下データも同様)