電子送金サービス「Swish」を操作する80代女性(博報堂生活総合研究所 研究員による撮影)

 私の在籍している博報堂生活総合研究所は、1981年の設立から現在に至るまで、「生活者発想」に基づいて生活者の行動や意識、価値観とその変化を見つめ、さまざまな研究活動を行っています。

 前回に引き続き、世の中で生じている事象に対して、研究所に蓄積された研究成果やそれらに基づく独自の視点により考察を加えてまいります。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるひとつのきっかけ・刺激となれば幸いです。

お金の電子化先進国・スウェーデン

 博報堂生活総合研究所では昨年から、「お金の未来」をテーマとした研究を進めています。これまでのコラムでも、日本国内の生活者のキャッシュレス化に対する意識や損得意識について取り上げてきました。今回はちょっと趣向を変え、視点を海外に転じて、キャッシュレス化が進んだスウェーデンの様子をご紹介します。そしてそこから、日本の「お金の未来」を展望するヒントを探ってみたいと思います。

・入り口に「現金お断り」の掲示をする店があちこちに存在
・バスには現金では乗れず、電子マネーでチケットを購入
・お金の出入りがアプリで記録され、家計簿をつける必要がない・・・
 

 こちらはスウェーデンの市街で見聞した、暮らしの様子の一部です。「現金お断り」の店があちこちにあるというだけでも、日本の生活とはだいぶ様子が異なることがうかがえますが・・・、それもそのはず、スウェーデンは世界有数の「お金の電子化先進国」。

名目GDPに対する現金流通量の割合推移(出典:BIS、IMF、各国中銀のデータより東短リサーチ作成)
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 お金の支払いのうちキャッシュレスでの支払いが占める割合=「キャッシュレス決済比率」を見ると、日本が20%程度、アメリカが40%程度なのに対して、スウェーデンは60%程度に達しています(2016年経済産業省統計、Euromonitor社調査より)。また、名目GDPに対する現金流通量で見ても、日本が20%程度、ユーロ圏でも10%程度なのに対して、スウェーデンはなんと1.4%。経済活動に対して、ほとんど現金が流通していないことが見てとれます。