(文:首藤 淳哉)
ユネスコの世界遺産委員会で、日本の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されることが決まった。国内では22番目の登録遺産となる。
この「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、長崎から熊本にまたがる12の構成遺産からなり、その中には、現存する国内最古のキリスト教関連建築物で国宝の大浦天主堂(長崎市)なども含まれる。
一時の熱狂的なブームは去ったとはいえ、世界遺産への登録実現は、観光客を呼びたい地方自治体にとっては悲願だろう。今回も2015年の申請では登録に至らず、資料の内容を修正した上で再挑戦し、登録へとこぎつけた。
実はこの再挑戦の過程で、不可解な修正がなされていたことはあまり知られていない。第24回小学館ノンフィクション大賞受賞作『消された信仰 「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』は、冒頭でいきなりこの謎を提示し、読者を一気に歴史ミステリーの世界へと引き込む。
「守られている」が「ほぼ消滅」に
修正されていたのは、構成遺産のひとつ、「平戸の聖地と集落」に関する記述だ。2014年に長崎県が作成したパンフレットでは、次のように説明されていた。
(太字部に注目)
「平戸地方の潜伏キリシタンの子孫の多くは禁教政策が撤廃されてからも、先祖から伝わる独自の信仰習俗を継承していきました。その伝統は、いわゆる<かくれキリシタン>によって今なお大切に守られています」