決め手はフリーゾーン制度

 そんな大善が海外展開を検討し始めたのは、10年ほど前からメーカーが工場を人件費の安い海外に次々と移転し始め、国内で出回る物量が激減したためだ。

 智昭さんの父、善兵衛社長は、成長著しいASEAN(東南アジア諸国連合)にターゲットを絞り、タイ、インドネシア、ベトナムを訪れて進出の可能性を探った。

 しかし、どこも日系メーカーや下請け工場の進出に伴い、それぞれ国内で取引している物流業者がすでに展開を果たしており、市場がほぼ出来上がっていた。

 日本の顧客の中に海外展開を考えている企業がなく、単独で乗り込みゼロから取引先を開拓する必要がある大善にとっては、厳しい事業環境だった。

 そんななか、友人の誘いでミャンマーを訪れ、ティラワSEZの開発計画を耳にした善兵衛氏は、開発会社の1つである三菱商事の担当者を紹介されたのを機に、ミャンマー市場を真剣に検討するようになった。

 進出を決めた理由は主に2つある。第1に、すでに進出していた他の物流業者は、ほとんどが地元企業に仕事を委託するフォワーダーの業態だったためだ。

 トラックなどの輸送手段や保管倉庫などのアセットを持ち、他と差別化できるサービスを提供すれば、新規にニーズを開拓できる余地は十分に見込めた。

 第2に、「フリーゾーン」制度が導入される計画を耳にしたためだ。

 ミャンマーにはこれまで保税倉庫がなかったため、国内企業が商品を輸入すると、販売先が決まっていなくても、商業税と関税を支払ったうえで貨物を保管しなければならなかった。

 一方、SEZの倉庫を活用すれば国内貨物はもちろん、関税や商業税、輸入税を支払う前の、いわゆる「外国貨物」として保管しておくことも認可される。