ITの活用で飛躍的に業績を向上させた山崎石材店

 少子高齢化と消費減少に伴い、日本の様々な市場が縮小している。石材(墓石)市場もその1つ。お墓を立てる人、お墓にお金をかける人が減少した結果、2000年に約4500億円だった石材業界の市場規模は、2015年に約2500億円と半分近くに縮小した。

 しかし、その流れに逆らって右肩上がりで売上を伸ばしている石材店がある。茨城県常総市の山崎石材店だ。2016年の売上高は2011年と比べて約1.7倍、顧客数は約2倍と大きく拡大。市場が縮小する中での山崎石材店の躍進は業界で知れわたり、今や全国の石材店や石材問屋が見学に訪れてくる。

 なぜ山崎石材店は逆境の中で成長しているのか。その秘訣は徹底的なIT活用にあった。山崎石材店の創業は江戸時代半ばである。約270年続く老舗の石材店がITをフル活用することで、業務の効率化、コミュニケーションコストの削減、さらには利益率および受注率の向上を実現した。

 同社は決して最先端の技術を活用しているわけではない。しかし、きわめて伝統的な商品を扱う老舗企業がITの活用で経営改革を成し遂げたという点は、あらゆる中小企業のお手本となるはずだ。

 とくに注目したいのは、ITが顧客との信頼関係の醸成に大きな効果を発揮していることだ。石材業界は、「最初に提示された金額より高かった」「イメージしていた墓と違う」などトラブルが少なくないという。お墓は頻繁に購入する商品ではない。そのため買う側にとって商品に関する情報が少ない。結果的に、売る側の言いなりになってしまうケースが多いのだ。だが、山崎石材店でお墓を購入した顧客は、約98%が「満足」と答えるという。満足した顧客は山崎石材店の評判を広め、新たな顧客を連れてくる。同社はそうした顧客との強い結びつきを基に、「墓石を売る」という旧来の業態から、顧客の「供養」全般を支援するサービス業へと転身しようとしている。

 一体どのようなシステムを作り、どのように運用しているのか。13代目当主の山崎哲男社長に語ってもらった。

展示場に並べられている墓石の見本