なぜなら、お墓には住所がないんです。大きい霊園の場合は地番がちゃんと決まっていたりするのですが、このあたりはそういう整備はされていません。田んぼの中にお墓が集まっているようなところになると、もう説明のしようがないんですね。だから、毎回、私の仕事が終わったあとに職人と待ち合わせをして見に行っていたんです。

 今は、それがなくなりました。石平くんにはお客様のお墓の位置情報が入っています。位置情報とお墓の写真を、トークノートの「Talknote」という社内SNSツールで職人に伝えます。職人はそれを見て、迷うことなく1人で行けるというわけです。おかげでコミュニケーションにかかるコストが大幅に削減できました。

利益を把握しながらサービスを提示

 以前は結構どんぶり勘定だったんですよ。いちどお客様に見積もりを出したあとに、収支をきちんと計算せずに、要望に応じて値下げしたり、サービスすることもありました。そのため、見えない赤字受注がけっこうあったんです。何件か赤字受注があっても全体で黒字ならいい、という感じだったんですね。ところが市場が縮小して、それが許される状態ではなくなってきました。そこで、クラウド上に見積もりシステムを作り、コストを見える化しました。

 現在は、お客様に見積もりを出すときに、見積もりシステムの画面をタブレットでお見せしています。必要な項目はこれとこれです、こういう仕様なのでこの値段です、国産の石ならばこの値段、中国産の石ならこの値段になります、というふうに細かく説明しながら提示します。

 いくら粗利が出るのかをあらかじめ把握した状態で話をしていますので、どこまでサービスしていいかが分かります。その結果、だいぶ利益が出る体質になりまして、年間の粗利益率が約12%上がりました(2015年度前年比)。やるべきことをきちんとやるようになった成果です。

お墓の写真データベースで受注率向上

 ITは営業活動にも大きく役立っています。具体的には既存客と見込み客のフォローです。

 うちでお墓を建てたお客様が次に電話をかけてくるのは、例えば、どなたかが亡くなって納骨を頼みたいというときです。すると、かなり年数が経っていたりする。お客様は久しぶりに電話をかけるので、もう忘れられていると思って、自己紹介をするわけです。でも、お客さまの情報は石平くんにすべて登録してありますので、誰が電話に出ても、お客様がどこの誰だかすぐに分かります。〇〇寺の白いお墓ですね、あの木の横のお墓ですね、その後いかがですか、といった対応ができるわけです。お客様はそうした対応を喜び、満足して、リピートや他のお客様のご紹介につながります。