5月3日、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は、平壌を訪問した中国の王毅外相と会談した。中国外務省の発表では、会談で金正恩は「朝鮮半島の非核化実現が北朝鮮の揺ぎなき姿勢」と語ったという。ただし、この金正恩の言葉は、北朝鮮では一切報じられていない。
北朝鮮は核放棄するのか? 北朝鮮問題のこの核心に関して、楽観論が広がっている。しかし、果たしてそうか?
金正恩の考えは誰にも分からない。もしかしたら、米朝間で具体的な条件に関する交渉が水面下で進んでいるのかもしれないが、公式な発表もしくは、それなりに信憑性の高い情報(たとえば、複数の米主要メディアが米政府筋のリークで一斉に報じ、それを米政府が公式に否定しない場合など)がない状況では、外部からは推測するしかない。
ただし、その推測も、それなりの根拠に基づくことが重要だ。その根拠として、外部から分かることの1つは、北朝鮮自身の言葉である。これまで何と言ってきたのか? また、何を「言っていない」のか? そして、何を「匂わせつつ、言質をとられない言い回し」をしてきたか? それを振り返ってみる(本稿ではあくまで非核化に関する文言に限定する)。
2018年1月1日─金正恩の言葉
2018年の「新年の辞」で金正恩は次のように語った。
「ついにいかなる力によっても、何をもってしても逆戻りさせることのできない強力で頼もしい戦争抑止力を保有した」