ペクリョン島へ向かう漁船。船にも船長の胸にも半島旗が。

 今回の劇的な「板門店宣言」が出る1週間前、筆者は韓国の西海にある最北端の島、ペクリョン島に降り立った。

 ソウルから仁川まで1時間、さらに仁川埠頭からフェリーに乗って4時間と計5時間かけてやって来た。中国に近いはずなのに、PM2.5の影響もなく澄んだ青空、少し冷たい風がそよぐ。

 船便は1日2本。仁川発は早朝、ペクリョン(白翎)島発は正午からだ。何もしないで帰るなら別だが、用事を済ませるには1泊せざるを得ない。

軍の許可がないと出航できない

 ペクリョン島に行くフェリーを待つ間、あたりを見回すと一般客に交じって、軍人たちも多い。

 ペクリョン島は、韓国の西側の最北端にある島で、北朝鮮と対峙しているため海兵隊の本部があるという。それ以外に現地の人や観光客も目にした。

 フェリーから降りて待ち合わせの漁師と連絡を取り、さっそく彼の漁船で北朝鮮が見える場所へ案内してもらうことにした。

 船が出発する前に必ず軍部の許可をもらわないと出港できないということで、無線で連絡を取る。

 許可が下りて漁船が港を出てすぐに漁師は「ほらあれが中国の船だよ」と言う。中国の船が韓国の領海に侵入しているのかと聞くと、そうではなく彼らは北朝鮮に料金を払って北朝鮮の領海で漁をしているのだとか。

 「では、あっちに見える陸地は北朝鮮なのか」と聞くと、「あれが北朝鮮の黄海道のチャンサン岬だよ」と言う。