私たちはなぜ食べるのか。食べものは身体の中でどうなっていくのか。アイコンはオリンポス12神の主神ジュピター。

 私たちは「食」の行為を当然のようにしている。では、私たちの身体にとって「食」とは何を意味するのだろうか。本連載では、各回で「オリンポス12神」を登場させながら、食と身体の関わり合いを深く考え、探っていく。

 当たり前すぎることほど深く考える機会が少ないのは、どんな分野でもありがちな話である。「食と身体」もしくは「食と健康」についての話題でも、「何をどう食べたらいいか」や「これは食べ過ぎてはいけない」などのテーマはあっても、「なぜ私たちは食べるのか」という当たり前すぎる事柄については議論されることが少ない。

「なぜ食べる?」は深淵なる疑問である

 実際、「なぜ食べるのか?」と問われたら、あなたはどう答えるだろうか? 「空腹だから」「力が出ないから」という即物的な答えもあるだろうし、「自分の身体を維持するため」という模範解答もあるだろう。

 しかし、「食べないと空腹になったり力が出なくなったりするのはなぜなのか? 身体の維持とは具体的に何なのか?」と問い返されれば、答えるのが少しずつ難しくなってくるのではないだろうか。

 ここで「なぜ食べるのか?」というテーマの象徴として、ギリシャ・ローマ神話のジュピターに登場してもらおう。ジュピターは雷や「アダマスの鎌」を武器とし、数々の争いに勝利して混沌とした世界に調和をもたらした。オリンポス12神の主神でもある。私たちの身体を調和した世界とみれば、その身体の根本原理を支配しているのがジュピターだ。そんな風にイメージしながら「なぜ食べるのか?」という根源的な問いを考えていこう。

細胞膜を透過する物質を得て材料に

 ただ、いきなりヒトの身体でその問いを考えるには、ヒトの身体は複雑すぎて大変である。まずは、単純な生物であるバクテリアをモデルにして考えてみよう。